古来、簡素さを愛し、曲線より直線の潔さに品格や威厳を感じ美しさを見出してきた日本の美意識。
本プロジェクトでは、京の都に受け継がれてきた伝統や、古来の和のテイストを新しい時代の意匠に昇華。
天神川から着想を得た東面ファサードに、“流れ”を意識した特徴的なデザインを演出。
従来の街の印象さえも変えていく新たな存在感の創出を目指しました。
天神川に沿って南北に広がる敷地に、モダン建築の美意識を込めた佇まい。周辺には低層住宅が広がる街並み、さらに近接する建物との距離は川や道路を挟んで約30mもの離隔を確保しています。本物件周辺は、近年都市計画変更により高さ規制が緩和され、これまでは約6階建てが限度でしたが、地上10階建てが実現。上層階からは東山連峰の美しい稜線が望めるほか、眼前にさえぎるもののない伸びやかな開放感が、室内空間に爽やかな光と風をたっぷりと招き入れ、日々の暮らしを一層潤いのあるものにします。
過去に遡ること平安時代。紙漉きにより薄墨が流れたというエピソードが残る天神川。地域に親しまれる清流は現代に変わることなく受け継がれ、未来へと続いていきます。その様をガラス手摺やタイル貼、スラブラインなどの多様な素材を用いて建築デザインに落とし込みました。
メインアプローチを天神川の上流にみたて、その流れを庭園風景に写し取る演出を採用。上流から下流へと水の流れが変化してゆく様を景石の表情や、リズミカルに彩る多彩な樹木を植樹することで表現しました。さらに、ルーバーで設えた塀や壁面の素材の質感により、河川沿道の修景となる庭園風景を創出しています。
計画地は京都市西部を流れる淀川水系の河川、天神川に面する。時代の移ろいの中でも変わらずそこにある天神川。変わることなく受け継がれる川の如く、古来から受け継がれている日本の美意識を尊重しながらも現代向きに昇華したシンプルな建物を目指した。外観は水平基調とし階層を分節することにより、日々表情を変えながら移ろいゆく水面が清らかな未来へつながり、流れゆく様をイメージしたデザインとしている。
街路から私邸へのアプローチには、あえて門扉を設けず、野趣あふれる自然石とシンボルツリーによる門構えを設えました。クランクさせた動線と、緑と庭石の連なりがあいまって、奥へと誘う優美な迎賓の路を演出します。
紅色に近い新芽の時期から季節と共に変化しながら晩秋に紅葉しやがて落葉するノムラモミジ。一方、イロハモミジは、春の爽やかな新緑、夏の涼しげな緑、秋の鮮やかな赤と葉色の変化が大きな魅力です。2種類のモミジのアーチが、住む人を艶やかに出迎えます。
イロハモミジ、ノムラモミジをシンボルツリーとし、エドビガンザクラや、アセピなどを効果的に配置。繊細な表情を描き出し四季を彩る樹種を選定しています。
動線に変化を持たせ奥行き感を演出したエントランスアプローチ。大きな景石や紅葉をはじめとする豊富な植栽計画により、邸宅の第一印象を美しく物語ります。
天神川沿いに点々と見える桜の景。 本敷地もその一つでした。住まう方とともに成長する若木のサクラとモミジのアーチ。より細やかな季節を感じられるように花やカラーリーフをちりばめて、美しい季節を彩ります。
ロビーは、壁面を飾るランダムな木目ルーバーと天井からの間接照明が、たおやかな水の流れを表現。
歩みを進めるにつれ、つねに変化するその表情が、永遠に留まることなく続いていく時の流れをイメージしています。
視界の先には、一幅の絵画のような庭園風景がガラス越しに展開。
静謐さと品位に満ちた表情によるおだやかな時空の狭間に、住む人の心を包み込む安らぎが宿ります。